企業の小児科医
コンサルタントとして創業したころは、「どういうポジションのことを仕事にするのか」というのは結構思い悩んだ。
一応、ITコンサルタントとして技術上の問題解決を主眼に置いたコンサルとして、仕事をはじめた。が、実際やってみると、技術上の相談はあることはあるけど、どちらかというと、新規事業そのものの立ち上げと表裏一体だったり、起業したての会社のコアコンピタンスの創り込みだったりと、ほとんどその会社や事業のスタートアップから軌道に乗るまでの面倒だったりする。こうなると、IT以外のコンサルも含め、ある面では総合コンサルタントの状態になってしまった。
周囲のコンサル業の仲間の話なんかを聞けば聞くほど、はじめは「これでいいのかいな?」と思っていた。
IT系のコンサル仲間は、バリバリとシステム設計の助言をしたり、上流工程の作りこみの助言をしたり、新技術の紹介や評価をしているのだ。他方で非IT系のコンサル仲間に聞けば、上場のための書類整備の助言とかビジネススキームの構築とか、偉いカッコウのいいことをやっているのだ。
どうも周りと違うなぁと思ったのだけれども、ふと気がついたのは、「うちのお客は何故僕に頼むのか」ということだった。実は、上場スキームを描くようなコンサルも、上流工程からがっちり決め込むようなシステム作りも、既にコンサル仲間がやっていて彼らがやる仕事として成立している一方で、それ以前の状態の企業や事業というのもたくさんあって、これのためのコンサルというのが著しく少ないのだ。だからこそ、そこの相談を乗るという自分が重宝されているんだなと。
実は世間にある日本のコンサルは、医者に例えれば、総合的といっても外科や内科、後は耳鼻科とかさまざまな方向に特化されたものばかりで、青年や年寄向けの医者ばかりなのだ。
最近でこそ、創業支援というのが流行ってきて、産科がかなり増えてきたけど、生まれたての事業を見ていく、小児科医があまりにも少ないのだ。
なので、ここ数年は「企業の小児科医」になろうと決めてコンサルをしている。
でも、企業の小児科医ってのは儲からない。親のある子供(第二創業とか)は親から金を取ればいいんだけど、企業社会には親のない子(ベンチャー等の新規創業)が結構普通で、企業でも自然人でも親のない子は普通そんなにお金がないので、結局、大手コンサルタントファームが必要とする諸経費分は払えないのだ。なので、組織維持費がかかる形態では、なかなかやるのが難しいのだ。だからうちは、個人事業でやらせてもらっている。
でも、決して、企業の経営者を子ども扱いにするということではない。むしろこちらが学ぶことが多い。でも、物事には順序があって、やっぱり創業から上場準備ぐらいあいだの段階は、子供と一緒で、親(この場合は経営者)が見てても、原因のわからないトラブルとか悩み事が発生する。それを、一緒に考えて解決していくのが仕事だったりする。
で、上場準備、すなわち社会人の仲間入り、ぐらいの年齢になったら小児科としても仕事はヒト段落と言うわけ。そこまで、無事の育つようにサポートするのが、「企業の小児科医」という仕事なんだろうなと。
なので、正直言って大人の企業はあまり上手く見れませんし、これから生まれるであろう企業の創業そのものの支援も出来ません。加えて、その子供産むべく結婚相談を受けるということはもっと出来ません。
でも、生まれてから学校卒業するまで程度の期間のいろいろなトラブルはある程度上手に見れるなと、最近自信が少しついてきました。
#ちなみに大人の企業に関してはIT等の限られた領域の仕事はちゃんとこなします。