球磨焼酎

球磨焼酎って銘柄じゃないじゃん。なんて突っ込まないで下さいな。実はこの年末、九州は人吉球磨まで行ってきました。ま、仕事で行ってきたんですけどね。

これまたすごい田舎。田舎者の私がいうんだから間違えありません。真の田舎です。
福岡の博多駅から八代駅まで特急で。じわじわとビルが減り、田んぼが増え、森が増えと個人的にはわくわくする感じです。そして、八代駅では、なんと!かっぱが弁当を売っている。このきぐるみが結構怖い。妖怪としてのかっぱの面目躍如という感じでした。
そこで、人吉駅行きの急行に乗りかえるのですが、それ以降は、どこまで行っても田舎。車窓の風景は、This is 田舎!グレート田舎!思わず道中の貸し切り状態の車内で無駄にはしゃいでおりました。

そして人吉駅到着。仕事の予定よりかなり早く到着。そして改札から出て駅の目の前に通りを挟んで聳え立つツインタワー。と、思いきやどちらもビジネスホテル。向かい合いで10階建てくらいのビジネスホテル。垂れ幕で一泊3,500とか書いてあるし。でも、1階を見るとどちらも小奇麗な観光客向けの土産物屋。
待ち時間に覗いてみようと入店してみると売っているものは、焼酎と菓子。ひたすら膨大な種類の焼酎と、膨大な種類のお菓子。他の選択肢はない模様。お酒くらいしか関心がないので、焼酎の棚を見る。どうも、どれも球磨焼酎らしい。地ビールとかさ日本酒とかさ、田舎らしいほかのお酒もあるでしょう?ね。と思わずつぶやきたくなった。

で、そうこうしているうちに、仕事へ突入。仕事の終わりは、人吉市に隣接しているとある村。撮影を見学して、村長はじめ地域住民が地域情報化に燃えているのを鑑賞。うーん。実に素晴らしい結束。で、撮影終了。当然飲み会に突入。

村長「まずはビールだな。さすがに喉が渇いた。」
そりゃそうでしょう。撮影に照明はつきもの。これが結構熱いのです。そして、焼酎以外も飲むという事実に一安心。酒宴が進むと、太い竹筒を斜めに切った、シシオトシのようなものが、火鉢の上に立てかけられていることが発覚。
地元の若い衆がおもむろに、その竹筒を持って
「さぁさぁ、まぁ、一杯。熱いのでどうぞ」
と、コップに何やら注ぎ飲むことを薦めますんで、素直に飲みますと。
お、うまい焼酎。
F「おいしいですねぇ」
村長「これが球磨焼酎です」
F「なるほど」
村長「冬はこうして飲むのが一番です」
その場の雰囲気で楽しく次々と杯を空けていくが、ある時、気がついたのは「これって、焼酎のお湯割りじゃなくて、焼酎の熱燗じゃん」と。ビンボー学生がビッグマンで最も素早く酔う方法として推奨されている奴じゃんか。
でも、そのうちグラスも竹筒を短く切ったものに途中で変わり、非常に風流な飲み会に。うまいものはうまいんだからしのごの言わず飲みましょう。意外と底冷えする球磨の冬の夜にはぴったりです。
その調子で、色々な球磨焼酎をとっかえひっかえ、夜更けまで楽しく飲みました。次の朝の目覚めもかなりすっきり。

そして次の日に、人吉市役所に仕事の取材に。はじめはまじめな会話をだらだらとしていたのですが、昨日の飲み会の楽しさとお土産の豊富さをもとに球磨焼酎に移ると、対応してくれたかわいらしいお姉様と、ダンディなオジサマの目の色が変化。
オジサマ「球磨焼酎というのはですね。スコッチみたいなもんなんですよ!」
F「?????」
オジサマ「お酒の産地銘付きジャンルというのは、世界でも稀なのです!!」
お姉様「ヨーロッパのスコッチウィスキーに日本の球磨焼酎です!」
F「はぁ、なるほど」
あとは気迫に押されっぱなし。元々の予定の取材の話はどこへやら。挙げ句に蔵にまで連れ込まれそうになる始末。

一つだけ分かったことがある。人吉球磨の人々にとって、本当に愛すべき酒が球磨焼酎なんだなと。そのエリアの人の誇り高い愛着は、世界だって敵じゃないんだろう。
こういう気概が都会に負けない田舎を作るんだろうなぁ。
迫力に負けて帰りのお土産は、しっかり球磨焼酎になってしまいました。

海外に行く友達に「スコッチ買ってきて」というのと同じ感覚で、これからは人吉球磨地方に旅行に良く友達には「球磨焼酎買ってきて」というようにしようっと。