グレンモーレンジ

大学時代の先輩Kさんが、毎度のように泊まりに来たときのお話です。
いつもは科学哲学談義にふけって寝不足になるパターンです。
泊まりに来るときは、いつも遅く来るので、その辺のコンビニで ビールかって、ちょっとのんで、はいオヤスミってパターンが多い のですが、めずらしく、私も仕事が早く終わり、私の家にPM8:00に 二人で集合。
K「うーん。たまに何処か飲みにでもでますか」
F「何処にします?」
K「Fさんは、いつもどんなところで飲んでますか?」
F「めんどくさいので、手近で済ませますか」
で、近所のバーへ。
行くと滅茶苦茶混んでる混んでる。
戦場のよう。
F「空きある?」
M「二人?」
F「うん。」
M「じゃ、奥。空いてるから」
Kさん、面食らった様子。驚きながらも、お店の奥へ。
F「騒がしくてすいません」
K「いえいえ、Fさんはいつもこういうところで飲んでるんですか?」
F「まぁ、お金がちょっとあるときは」
M「なににするの?」
K「あ、ここは、どういうものが人気があるお店なんですか?」
M「まぁ、バーボンとかカクテルが良く出るかなぁ」
F「で、私はここで、いつも違うものを頼む(笑)。で、今日は何を隠してます?」
K「隠してあるとは?なんか、常連専用の秘密のメニューでもあるんですか?」
M「いや、常連専用と言うわけじゃないんですけど」
F「まぁ、ここじゃあんまり売れんけど、マスターの好みのお酒を仕入れているのだよ」
K「ほぉ」
M「で?なににする」
F「モルトはなにか?」
M「うーん。厳しいところつくねぇ」
F「無いの?」
M「あるんだけどさぁ」
F「なに?」
M「封切りなんで、もったいない....。」
F「ラッキー。それに決定!」
ぶつぶつ言いながら、奥の棚から、一本のモルトウイスキーを持ってきた。
K「いや、何が出てくるんですか?一杯、一万円とかの高級なものですか?」
F「そこまではとらんでしょ」
M「はい、グレンモーレンジ18年」
F「さぁ、開けた開けた!」
M「はいはい。あ、連れの人はなに?」
K「え?え?」
F「同じもの飲んで見ませんか?」
K「あ、はい」
F「つうこって、2杯」
M「はい」
低い足つきのシンプルなグラスに、琥珀色の液体が。
K「いや、なんか、高級そうですねぇ。私に分かるんですか?」
F「分かると思いますよ。さすがに」
取りあえず一口。
K「いや、これは美味しいですね。私でも分かりますよ」
お店の喧騒を忘れて、二人で、珍しく一言も話さないで 黙々と飲むという、不思議な状態になりました。

良い酒は沈黙を生む。