コペンハーゲン

その昔、私が科学哲学の勉強をはじめたころのお話でした。
量子力学の解釈問題なんて、めんどくさいのが主流の研究室でして、 量子力学や量子化学自体はさほど、苦手としたことな無かったのですが、 いやいや、これが難しい。

でも、結構子供の脳みそなので、ちょっと覚えると、 すぐ人に話したくなる.........。 で、また、あいも変わらず客の少ない、いつものバーでマスターに絡んで。

F「でさぁ、いま、大学院で量子力学の解釈問題ってのをやってるんよ」
I「量子力学って何?」(そりゃそうだ)
F「原子とか電子ってのは、普通のニュートン力学じゃ説明できなくてさ、 それを説明する力学なんだよね」
I「ふーん」
F「でね、これがまた、複雑怪奇なんだわ。この量子力学ってのは、 実際にはいろんなことに応用されてるんだよね」
かなり、しばらく、Fの薀蓄が延々と続く。
I「で、そういうことを研究してるんだ」
F「そこが微妙に違うのが味噌なんだよね」
I「どう違うの」
F「量子力学そのものの問題じゃなくて、量子力学の意味を考えるんだよ」
I「へぇ」(そろそろ飽きてきた)
F「今、研究室ではボーム解釈ってのをやっててね、なかなかおもろいんよ」
I「ほうほう」(かなり飽きモード)
F「このボーム解釈ってのは、今まで主流だったコペンハーゲン解釈とは違って明快な世界観があってね..............。」
I「コペンハーゲンねぇ」
F「どうしたの?」
I「いや、ちょっと、気になったことが.........。」
で、Iさん裏で本を開く。
I「ちょっと、飲んでみない?」
F「なにを?」
I「いいからさ」
F「ま、丁度空いたし、ちょっと作ってよ」
で、Iさん、ビーフィータを取り出し、そして、ノイリー&オリーブ。
うーん。マティーニじゃんねぇ。
で奥の冷凍庫を、ごぼっと空けて、中から冷え切ったアクアビッツ(銘柄が思い出せない)を取り出した。
で、ビルドでマティーニと同じように、ただしアクアビッツを加えて。
最後にオリーブを添えて。
I「はいどうぞ」
F「ふーん.............」
I「ちょっと飲んでみてよ」
で、飲んでみる。アクアビッツの甘味がある分、マティーニよりやわらかで飲みやすい。
F「で、これなに?アクアビッツが入荷したから?」
I「いや、初めて作ったんだけどさ」
F「毒味かい?オリジナル?」
I「いや違うよ。えーとね。何だっけ?さっきのなんとか解釈」
F「ぼーむ?」
I「違う違う、もう一個」
F「コペンハーゲン?」
I「そうそう。そのコペンハーゲン」
F「ひょっとして、このカクテルの名前?」
I「あたり」

コペンハーゲン解釈は好きじゃないが、このコペンハーゲンカクテルは美味しいぞ。
アクアビッツ置いてある店が少ないので、最近飲んでないけど。