ベンガル・ジン

札幌の寒い冬の日のこと。
札幌の飲み屋の開拓に、その頃は、非常に積極的に
数多くの、バーに出入りしていました。
ふと、狭い通りに入ってみた時、
まだ行ったことの無いバーを、見つけ入ってみました。

早い時間なのか、お客は少なく、
カウンターの中には老夫婦が。
「いらっしゃい」
カウンターに、そっと座ると、老婦人が、生ハムを軽く盛り
「お通しです」
と、まず、目の前においた。
マスターが、
「何になさいます?」
当時、ジンを飲みはじめた頃で、大陸系のジンに凝っていたので
F「取り合えず、シュタインヘーガーを」
で、バックバーを眺めていると、あるはあるは。
お酒。モルトを中心に、ずらっと並んでいる。
こういう所で、ジンばかりってのも、
本当は、問題があるのだろうけど。

で、いろんなジンをとっかえひっかえ、数杯飲んでいたら、
M「ジンが好きなんですか?」
F「ええ、まぁ」
M「冷えてはいませんが、珍しいジンがありますよ」
F「それ貰おうかな」
M「ちょっと待って下さいね」
といってしゃがみこむと、一番下の棚をかき回しはじめた。
しばらくして、全身埃まみれになったマスターが
M「ありましたありました」
F「ずいぶん厳重に保管してるんですね」
M「そういうわけでもないのですが、既に製造してないジンなので」
F「なるほどぉ」
で、ようやく目の前に現れた瓶は、今のギルビーのようなデザインに ラベルにはトラの絵が。
M「ベンガル・ジンです。開封してから、ほとんど飲むお客さんがいなくて」
F「なぜ?」
M「モルト中心の店ですからね。どうします?」
F「ストレートで」
M「かしこまりました」
で、もう飲めないと思ったこのベンガルジン。
いまでも、限られたお店では、限定的ですが
楽しむことが出来るようです。

味は、皆さんで探して味わって下さい。