シャンディーガフ

私のいた研究室の後輩が京都大学の院へ進学した。

ほんとに、勉強のしない、指導のしない先輩で、 さぞや、迷惑をかけたのだろうと、反省する事しきりである。
そんな中でも真摯に研究に励んだ有能な人材が、 また、新しい研究をするのだから、 日本の科学哲学の未来も少しは明るいというものだろう。

しかし、北大生え抜き一号になってもらいたかったな。


彼は、そこそこ、暇を見て、良く一緒に飲んでくれたし。
むちゃくちゃな飲み方をする、こんな男と良く飲むよ。
感心するね。

でも、あんまり良いとこ連れて行った記憶ないなぁ。
その辺のライオンとか、駅構内のバーとか。
近所ばかり。

でも、彼の真面目な学習態度や、 正直さ(馬鹿が付きかねないくらい)には いろいろ影響された。

私が今の会社の内定が決まって、彼と飲んだ時 (他の研究室関連の人は自分の勉強が忙しく 飲んでくれなかった) の話し。
駅構内のバーで。

K「Fさん。ほんとにおめでとうございます」
F「いやいや」
K「僕は、こういう仕事できそうもないですし、すごいですよ」
F「おだてない、おだてない。何飲む?」
K「何にしましょうかね」
F「おれ、ちと、軽く行くわ。この後、一件控えてるんで」
K「私も同じ物を」
カウンターに向かって
F「すいません、シャンディーガフ2つ」
K「なんですか?その、シャンディーガフって?」
F「ビールのジンジャー割」
K「なるほど」
F「飲んだら、また戻るの?」
K「実は、僕、明日ゼミの担当なんですけど」

で、ちびちび飲みながら。

K「Fさん、就職したら、科学哲学はもう辞めちゃうんですか?」
F「そうだなぁ、老後の趣味ぐらいにはなるんじゃないか」
K「老後の趣味ですか」
F「たくさん未読の文献コピー溜まってるし。読まないと損くさいしね」
K「そうかぁ」
K、残りのシャンディーガフ飲み干し。
F「なんだよ」

K「Fさんには、科学哲学の大切さとか、良さとか 他の人に伝えてもらえると嬉しいなぁ」

F「おいおい、それは、研究やってる奴の仕事でしょ」
K「でも、自分で勉強するのはいいけど、こう、 他人に伝えるってのは、やっぱり苦手で」
F「それも、まとめて、勉強しよう」

その時は、こう、やらないといったけど、
「こういう不器用な奴のために、こんなことやってもいいかな」
なんて思ったのが正直なところだ。

このときから、いまのホームページが頭に生まれてきたんだよね。
じつはさ。


ある面で、彼は、 科哲の部屋の生みの親かも。