いいちこ

えー焼酎かい。えふも焼きが回ったな。 なんて言わんでください。一応大切な思い出の味なのです。 いまでも仕事が詰まった時には思わず手が出ます。

実は焼酎なんて、全然飲まない人間でした。

Fがはじめて就職した時、配属先にI先輩 (ノキアのIさんではない)がいました。 はじめはとっても無愛想で、他の人がいろいろ親切に 実務的なことを教えてくれるのに、その人は
I「ちょっとこい」
F「はい」
棚を指差して
I「暇あったらこれ全部見とけ」
って言ってそのままどっか行っちゃう人でした。 新人の世話なんてメンドくさかったんでしょうね。
挙げ句に、はじめて加わった仕事では、 バイトより低い扱い。 他の人が唖然とするくらい、とんでもなく扱われました。

6月頃でしょうか。焼尻島へロケにその人が行くのに ついていくことになりました。
I「島いったらやること何もないよね。Fなんか遊ぶもの 買ってこいや」
F「はーい。」
I「あと、飲み物食い物忘れるなよ」
F「はーい。でも、ビールとか飲み物はぬるくなるから 現地調達ですよね」
I「Fほんとに店とかないんだぞ。焼酎とかなら、 ぬるくてもいいから買っとけよ」
F「焼酎ですか?焼酎はちょっと.......。あんまり飲まないので分かりません」
I「じゃ、いいちこ買ってこい」
そう言われたので買って持っていきました。

で、ロケにいって、車で島内一周。
撮影しながらでぐったりでした。
でも、楽しくロケが出来ました。
で、夜は、IさんとFが旅館の相部屋でした。

(トランプしながら)
I「Fって思ったより面白い奴だな」
F「そうでしょ?」
I「いいちこだせや」
F「はい」(ビンを手渡す)
I「お湯ないの?」
F「ありますよぉ」(ポットを手渡す)
I「Fも飲めや」
F「はぁ。なんか明日残りそうですね」
I「いいちこが一番、次の日残らないと思うけど」
F「そうですか。頂きます」
外を見るIさん。外は漁り火が沢山ついていました。
I「何の漁かな」
F「なんか小女子って言ってましたよね」
I「じゃぁ、朝一で引き上げるとこ撮ってこよう」
そんな事言いながら、いいちこを二人で一本開けました。

で、次の日は朝5時ごろからもう撮影に入ってました。
確かに残ってませんでしたね。
そして朝ご飯は取れたて釜茹での小女子でした。

このIさんにはロケから帰ってきてから、びっちり仕事を 教わりました。台本の書き方から編集の技術まで、 今のFが、今の会社で理不尽な要求をこなせるのは、 この人のお陰以外なんでもありません。

Iさんが人事異動する送別会を 担当したのが今の時期でした。
その時Iさんは退院と異動が重なって、 送別会をしてあげることが出来ませんでした。
今でも心残りです。

この「いいちこ」と小女子の味は、一生の思い出ですね。