相対主義

多くの書籍等々で議論されているので、ここではポイントを羅列し簡単な基本の要約だけを行う。

1.科学は累積的知識によって進歩するという考え方の否定
科学は原則的には変化はしても進歩はしない。ただし、あるパラダイムの中で パラダイム初期から後期に向けてはそのパラダイムの中で進歩的なことはあり得る。

2.科学の研究はパラダイムと呼ばれる枠組の中で行われる
パラダイムの意味はあまりに広く曖昧な為、多くの科学哲学者に攻撃されるが、 大雑把にいって、科学者集団が解くべき問題の集合(問題領域)、 解法の集合(理論体系)、からなる。倫理規範体系や、考え方なんかを含むこともあるが 科学哲学の議論では、そこまで広げる必要性も薄いだろう。

3.パラダイムにそぐわない観察事例(変則事例)の蓄積がパラダイムの否定の引き金になる
パラダイムの持つ解法の集合をいかに駆使しても、説明できないイレギュラーな 現象を指す。

4.新しいパラダイムは古いパラダイムにおいて変則事例とされていたものを説明出来るものになっている。
ここで、ポイントなのは、古いパラダイムで説明出来ることが、 新しいパラダイムで説明できなくても良いという点である。 酸素のパラダイムではフロギストンのパラダイムで説明して いたようなことを無理に説明する必要はないのである。

5.新しいパラダイムと古いパラダイムの間で、命題Aや語bのようなものが一見共通に使われていても、それの指すところは全く共有されない。(共役不可能性)
これは、ニュートン力学の「質量」というのと相対性理論の「質量」は 全く同じ語であるが(当然直感的に同じことを指しているように感じるが)、 全く違うものを指していると考えるのである。

ただ、非常におもしろいところをついてはいるが、あまりにラディカルなので否定されている。とはいえ、色々な人が少しづつ修正を加えたり、自分の論に取り入れたりしていまだに、日本では人気のある立場である。