ベイズ主義

確率を仮説を真と考えるという「信念の度合い」とする立場。反証主義など多くの科学哲学上の立場が仮説を支持する証拠が増えることによって、その仮説の確からしさを増大させるという帰納法的立場を棄却してきた。
しかし、このベイズ主義は確率論に出てくるベイズの定理を援用し、仮説を支持する証拠を集めることによって仮説を真とする信念を増大させるということを合理的であるとする。
ベイズの定理と言うのは
P(H/E)=P(H)・P(E/H)/P(E)
という条件確率の定理である。この時、Eを証拠、Hを仮説とすると
P(H/E)というのは、
「証拠Eが発見された時の仮説Hを真と考える信念」
と読みかえることができる。
EはHを支持する証拠であるから、EはHを含意するのでP(E/H)は一般に1で、0 P(H/E)>P(H)
である。さらに言えば、証拠2であるE2を発見したとすれば
同様に
P(H/E・E2)>P(H/E)>P(H)
となり、証拠を重ねることにより、真であるという信念の度合いは増大して行くのである。

ただし、ここでポイントとして言えるのは、あくまで「信念の度合い」という 非常に主観的な取り扱いであり、証拠を重ねるからといって理論それ自体の真偽には無関係である。さらに、P(H)の初期値をどのようにとるべきかという問題などベイズ主義にはクリアすべき問題も多い。
しかし、AIなどコンピューティングの進歩とあいまって定量的に計算できるベイズ主義への注目と応用は非常に高まってきている。