不完全性・非局所性・実在主義―量子力学の哲学序説

読者は一度に全体が読みとおすことができなくても、くじけずに他の書物をあわせて読みながら一年かそれ以上かけてゆっくり読んでいかれるとよいであろう。(P.214、訳者あとがき)

あー、恩師の言いそうな言葉です。全く短絡的に答えだけ覚えたがる現代の読者には、ほとんど受け入れられないでしょうに。
ちなみに、恩師が翻訳した本です。量子力学の哲学の基本を押さえた良書です。翻訳も丁寧です。ただ、普通に読んで普通に理解するのは無理じゃないかなぁ。一応、僕も、修士は嘘でも量子力学の哲学で取っているので、ある程度素地があるので、今でもそれなりに読めるけど、そうでない人は厳しいよなぁ。とか、偉そうに書いているけど、在学当時からコッヘン―シュペッカーはいまいちよく分かっていません(^^;。こんなこと書くと学位消されちゃうかしら。

ちなみに、量子力学の哲学の基本として、オブザーバブルQに対して

見解A:Qは、くっきりした、しかし、知られていない値を持っている。/見解B:Qは、ぼやけた、すなわち、「ファジーな」値を持っている。/見解C:Qの値は、定義されない、すなわち、無意味である。(P.52)

に関してどうかということがある面で究極の論点なわけだ。それの行き着く先ってのが

ポパーが注意したように、われわれの理論は「世界を把握するためにわれわれが考案した網」である。量子力学がかなり奇妙な魚を捕らえてしまった事実を直視すべきであろう。(P.186)

こんな事態になっているということです。あと、恩師にいつも言われていて覚えていた一言。たぶん、これ書いているときにものならってたんだなぁとか思う。

ゼロ確率は、けっして不可能性ではない。(P.12)