影の現象学

忠告によってのみ人が変わるのなら、心理療法家などという職業は不要かもしれない。(P.227)

あらゆる相談業は不要でしょう。僕も失業ですな。
無意識というかそういったものに「影」という概念を割り振って、その心理プロセスを解説した本。実は、読み物として実に面白いです。精神分析関連の書物の中では最も読みやすく面白いかと思います。

「消えろ消えろ束の間の燭火、人生は歩いている影たるに過ぎない」(P.22、マクベス五幕五場より)

というように、文学の比喩をたくみに取り入れながら、読ませる様は秀逸です。他の本でもよく引用していますが、この本のは読み物として面白くするのに成功しています。

影の取り入れは成功すれば創造的であるが、失敗したときは破滅につながってゆく。(P.34)

僕は、取り入れを随分しているのですが、破滅になっているのか創造性の向上になっているのか判別はつきかねています。そうやって迷って人生送っているのが人間なんでしょうね。

われわれは同じ人間として、決してなくなることのない影を自ら背負って生きてゆかねばならない。(P.289)