人生論

それでも、生きてゆかなければならない。(P.45)

そうですね。それでも生きていきましょう。
うーん、有名な本なんだけど、まず第一印象としては、理科教育で挫折して文系に移った子供が、挫折感をベースに適切な科学観を抱くことなく、ひたすら文句を言い散らかしているだけの本なんだな。はっきりいってしまえば、いわゆるヨーロッパ語圏における言語の意味分化の不十分さに起因している屁理屈ばっかりだったりする。

日本語では、生命、生活、人生、一生と、いくつもことばがあるが、ロシア語ではこれらすべての語が、ジーズニという一語に含まれる。(P.219、解説)

ということで、本書をこの訳者は、生命で訳を統一しちゃったんだな。日本語で生命って言葉に人生ってニュアンスはないので、読んでいて何を憤っているんだかと冷静に読めちゃう。
でも、だからと言って、この本の内容全てが無意味でばかげているという感じでもない。道徳的な人生論としては秀逸だと思う。基本的に、利他に生きよ、ということを徹底して論理的に述べている点は評価できる。
若いうちに一度読んでおくと良い一冊だとは思う。でも、いい歳してからこれで開眼するようじゃ、あなたの今までの人生ってなんじゃいねと思う。まぁ、そういう意味では、タイトルが「人生論」ってのは正しいのか。

われわれが完全に知っているのは、我々の生命と、幸福への志向と、その幸福を示してくれる理性だけである。(P.78)

個我の幸福の達成にだけに向けられる人間の活動は、人間の生命の全面的否定にほかならない。(P.92)

お前のその望みがかなえられる状態は、一つだけある。それはあらゆる存在が他人の幸福のために生き、おのれ自身よりも他の存在を愛するような状態だ。(P.101)

人間の志向するものは与えられている。死となりえない生命と、悪となりえない幸福がそれである。(P.209)