魔術から科学へ―近代思想の成立と科学的認識の形成を探求した名著

魔術的操作は奇跡的に見えるだけであって、自然の限界を決してこえるものではない。観客がそれらがいかにつくられたか理解しないだけである。(P.19)

これはまさに現代の科学のおかれている状況ですね。で、さらにその無理解のおかげで魔女狩りならぬ科学狩りが行われているような気がします。この国は大丈夫なのでしょうか。
ちなみに、本書はフランシスベーコンの思想の解説書。このベーコンってのが活躍したのが1600年頃。日本じゃ関が原の合戦とかやっている頃。そんな頃にすでに科学の萌芽があって、その哲学的基盤を求める思想家が居たってのは、すごいなぁと。ま、なので、日本の科学教育が遅れてしまったのは、他方やむをえないことでもある。
で、日本での、科学狂想曲みたいな状況を見ると

科学的知識を正しく伝えることができないということは、こうした人に欠陥があるのではなくて、かれらの目的が不毛であることに欠陥があるのである。(P.177)

ということで行けば、日本への科学の伝播は目的が不毛だったってことなんでしょうか。と不安になります。

ベーコンにとっては、科学は公共的、民主的、共同研究的性格を持つもので、一般的な成功と万人の共通の善に貢献すべき個人的努力であった。(P.27)

科学者の進んだ跡をたどり、その主張を照合し、かくして科学を、教師の精神のなかで発展したとおりに正確に生徒の精神に移植することが不可能であってはならない。(P.217)