鬼の研究

<鬼>とは破滅的な内部衝迫そのものであり、心の闇に動く行為の影である。あるいはそれは、極限的な心情のなかで、人間を放棄することを決意した心でもある。(P.191)

文字通りの鬼の研究。鬼というものは一体全体なんなのかということを、文学的側面から読み解く良書。
とはいえ、なんと言うか、まずは日本の古典に関する最低限度の知識は必要。それがあったとして、書き手の話を想像力を持って追うのは結構大変。正直、数理科学的な分析じゃない手法自体正直苦手なんだわさ。
内容というか結論そのものはそれぞれ結構面白いし、うーん、と深く考えさせられるところもある。鬼という概念に興味があれば、時間をかけてじっくり読み解く価値のある一冊、というところでしょうか。

爛熟し頽廃にむかいつつある時代の底辺に、鬼はきわめて具体的な人間臭を発しつつ跳梁していたという印象を受けるのである。(P.141)

栄華もなく、利欲もなく、身を自然のひとつとなして、生きながら鬼と呼ばれ、妄執の最後のひとつが消滅するまで、そのあくなき執着にたとえられた喩の山をめぐる。(P.285、山姥の生き様)