法における常識
人と物とに対する力の帰属および行使に関して、社会が課しかつ強制する規範体系(P.52、法の定義)
大学時代一度読んだっきりになっていて、当時は何の感銘も受けず、「ふ~ん」と思って放っておいたもの。今読み返すと、大変勉強になる。というか、今の仕事がそれ相応に法に関しての知識が要求されるからという側面もある。
紳士が、もし法についてのある程度の知識を身につけていないとすれば、紳士は、人生のどのような舞台においても、民衆に対する義務および自分自身に対する義務の、いずれをも適切に履行することができないのである(P.11、ブラックストンの言葉)
まさに、こういうことを実感しながら働く羽目になっている。とはいえ、ヴィノグラドフの法に関してのスタンスは、ブラックストンのまだ先にある。でも、どっちにせよ、公民やるなら、個別の法を知らなくても、法ってこんなもんだよってことぐらいは知っておいたほうが良い。それも、TV番組の変なお金が取れる取れないみたいな話ではなく。
でも、倫理規範であり強制力でもある法という不思議なものを考察するってのはたまには面白いもので
近代法における権利義務の主体は、必ず人、すなわち生きている人間である。(P.64)
と言うことであるけれど、行為だけを見るのではなく
法が出発点としてとりあげるものは、人の内心の意識ではなく行為であるが、人の行為はあらゆる点において、その行為に表示された意思との関連において評価されるのである。(P.51)
という面があり、加えて
法が立派に行われるのは、犯罪者が少数であり、国民一般が法を尊守する間に限られる。(P.47)
という社会性も兼ね備えた複雑怪奇な面もある。なので、書籍の中では、境界設定問題のような議論も結構シッカリやっている。あと、
イギリスの近代法において、法人の「人としての」存在は、擬制ではなく、実在と考えられている(P.70)
この辺を押さえていないと、現代社会を適切には理解できないかも。
あと、個人的に、こういうヴィノグラドフの人となりは好きですね。職業としての学問を地で行くスタンス。
諸君の気持ちは解るが、学問は政治と違うから自分は講義行う(P.246、学生運動下で)
あと、こんなのは最近のモンスターペアレンツ花盛りの日本じゃいうとクビですな。僕は好きですけど。
「では覚えなければなりませんね」(P.257、ドイツ語ができないと訴えた学生に対し)