オセロー

体面などというやつは、およそ取るにたらぬ、うわつらだけの被せものに過ぎない。それだけの値打ちがなくても、手に入るときには手に入るし、身に覚えがなくとも、失うときには失うように出来ているのだ。(P.71)

なんでしょうね。人並みに結婚の一つでもしてみると、読んでみて内容のわかる話なのかなと思えるかな。初読のときは四大悲劇とかいうわりには異様に印象に残らなかったことは覚えてる。
シェークスピアお得意の嫉妬心をあおって身を持ち崩させるストーリー。結構、この話しはその辺がシンプルに書き出されている。体面を重んじつつ、愛蔵の判断と体面を切り離すことを忘れさせられる人間のおろかさを切り出している。誠実一路の評判の部下がひたすら出世レースを追い抜いた同僚をあおって、上司と同僚を破滅に追い込むという話し。とはいえ、そのやり口は行き当たりばったり。

悪事というやつは、その場その場で目鼻をつけていくものさ。(P.56)

とはよく言ったもの。とはいえ、

邪推にはもともと毒がひそんでいる(P.97)

し、

過ぎ去りし禍いを嘆くは、新しき禍いを招く最上の方法なり。(P.32)

というだけあって、オセローはその嫉妬の泥沼にはまっていく。

悪意から悪を学びませぬよう、それを鏡に自分の悪を正すことが出来ますよう(P.151)

と、思い悩んでも、邪推からとはいえ信頼を失ってしまったあとでは取り返しはつかない。

信頼を失ってしまった男が、いまさら武人の体面を思い煩ってみたところで、どうなるというのだ。(P.173)

で、そこで、自害して果てなくとも挽回のしようがあると思えないのかねぇとはどうしても思ってしまう。まぁ、ロミオ~とかマクベスよりは結構素直に楽しめる一作かと思われます。あ、でも、はじめに書いたけど既婚者向けかな。たぶん。