職業としての学問

ただ僥倖を待つほかないということである。(P.15)

実質、わずか65ページの小冊子。マックスウェーバーの講演録。
内容もさることながら、個人的に思い出のある本でもある。というのも、大学受験に際し、会場で体調を崩し試験の最中に戻しそうになり、途中離席。一吐きして、「あー、おわった。」と思っていたら、突然、「もう大丈夫かい?」と声をかけてくれて「はい」と答えると、「じゃぁ、席に戻って続けない」と、行ってくれた試験監督のおっさんが言ってくれた。でも、途中で堰を断ったら戻っちゃいけないっていわれていたような気がする。で、おかげさまで、合格し入学。何も知らず、社会思想史という講義をとると、その試験監督のおっさんが教授。いやはや驚いた。で、その授業で繰り返し参考書や副読本として登場したのがこの本。なので、この本を読むと、その先生の顔をいつも思い出す。
で、僕にとっての、学問の一部を職業とする状況へと推し進めた、僥倖の一つがまさにこの出会いなのだろう。

で、読み返してみるたびに、今の若い子に読んでもらいたい。と思う。

情熱なしになしうるすべては、無価値だからである。(P.23)
学問の領域で「個性」をもつのは、その個性ではなくて、その仕事(ザッへ)に仕える人のみである。(P.27)
現代のヤンガー・ジェネレーションにとって、もっとも困難なのは、この日常茶飯事に堪えることである。(P.57)

学問以外を職業にするにせよ、情熱を持ち、仕事に真摯に仕え、日常茶飯事の繰り返しに耐えることこそが、最も重要なのである。一足飛びに成功者になることもないし、奴隷のように働くという姿勢でも世の中ゆがんでいく。ぜひとも、通読しよく吟味してもらいたい。

あと、自己への警鐘で一句だけメモ
大学で教鞭をとるものの義務はなにかということは、学問的にはなんぴとにも明示しえない。かれにもとめうるのはただ知的廉直ということだけである。(P.49)