養生訓・和俗童子訓

人の命は我にあり、天にあらず。(P.27:養生訓)
志正しきは、万事の本なり。(P.232:和俗童子訓)

江戸時代に貝原益軒という人が書いた予防医療の本と子供の教育方法の本。

生類憐みの令以降(綱吉死後で廃止はされているものの)の本なので、肉食に関する記述は全部だめ的なものが多いのかと思ったら、肉の食い合わせの解説で「同食(くいあわせ)の禁忌多し、(略)、豚肉に、生姜、蕎麦(略)、牛肉、鹿肉(略)を忌む。(P.90)」のように、肉食を前提にした記述が普通にある。結構、肉食う人は食っていたって事なんだなぁと。また、鎖国していたとはいえ、普通に町人相手の本なのに、「四十歳以降は、早くめがねをかけて、眼力を養うべし。(P.108)」と、舶来品のめがねを推奨している。ということは、この時点で普通の代物だったということだろう。なんとなく僕自身の江戸時代のイメージが変わる。

両方に共通してるなぁと思うのは、貝原さん、勉強しないやつが死ぬほど嫌いなんだろうなぁと思われる。というのも、
俗医、利口にして、医学と療治とは別のことにて、学問は、病を治するに用なし、と云て、わが無学をかざり、人情になれ、世事に熟し、権貴の家にへつらいちかづき、虚名を得て、幸いにして用いらるる者多し。(P.125:養生訓)
とか
凡そ学問して、親に孝し、君に忠し、家業をつとめ、身をたて、道を行い、よろずの功業をなすも、皆むずかしき事をきらわず、苦労をこらえて、其わざをよくつとむるより成就せり(P.229:和俗童子訓)
なんかは、勉強しないで世渡りばっかり上手になろうとする輩になるなという警句だし、そういう輩に仕事は頼むなって事。気持ちはよく分かる。

本来はそれぞれ雑感を残すべきなんだろうけど、個人的にこういう言葉はなるほどなと思えたものを気ままにピックアップだけして読了。

養生訓より

人の身は父母を本とし、天地を初とす。(P.24)
もろもろの善は、皆欲をこらえて、ほしいままにせざるよりおこる。(P.29)
たとい財禄を求め得ても、多病にして短命なれば、用なし。(P.40)
酒は天の美禄なり。(P.91)
心は人身の主君也。(P.101)
老後はかえって、多欲にしていかりうらみ(怒り恨み)多く、晩節をうしなう人多し。(P.159)

和俗童子訓より

わかき時、安楽にて、なす事なく、難苦をへざれば、後年にいたりて人に及ばず(P.213)
約をたがえては、偽りとなり、信を失なえば、人にあらず(P.214)
己を是とし、人を非として、あなどる事を、固く戒むべし(P.217)
わが気にまかせて、位におごり、才にほこり、人をあなどり、無礼をなすべからず(P.225)
師をたっとばざれば、学問の道たたず(P.226)
善をこのんで行い、悪をきらいて去る、この志ただ一つなるべし。この志なければ、学問しても、益をなさず。(P.230)