離婚する女たち―北海道の女に見る別れとは

離婚は「死んだ結婚」に威厳をもって解消する方法を与えることによって、結婚の制度を支持することになろう(P.202:1969年イギリスの法律委員会での発言)

幸いにというか不幸にというか、離婚という経験はない。全く当事者ではないが、結婚というこういうをしている時点で、著者の言うところの「離婚」未遂者(P.199)であるのかもしれない。そんな状態になるとは夢にも思わなかった独身のころに仕事の必要性で買った一冊。
本書は、離婚大国といわれる北海道の離婚率の高さの根源を、著者独自の視点で取材し掘り下げようと試みた著作である。ここに書かれた理由が正しいかどうかは別にしても、十分に理解を促すだけの内容といえる。女性からだけの離婚事例を見るのではなく、男性の離婚や父子家庭問題、そして、離婚してもまた結婚する人々にもスポットを当て、北海道のみならず、日本人の結婚観を浮き彫りにしている。
そして、結婚に求められる男女像や社会像に関する神話を指摘し

これらの漠然とした、しかし根深い神話は、さまざまな幸福の鋳型をつくって幸福を求めてさまよう不安な人々を動かす。(P.149)

結婚にせよ離婚にせよ再婚にせよ、その神話に縛られて多くの人間が動いている。たぶん、比較的新しい生活を送っている「子育てのらSOHO」と呼ばれるうちの夫婦だって、そんな神話に縛られている一組の夫婦に過ぎない。実際、人間の生活とはそういうさまざまな神話に縛られて、行動指針が出来上がっているようなものだ。
そうした神話に縛られるのが必ずしも不幸といえるのか、解き放たれれば幸福になるといえるのか、非常に考えさせられる一作だ。