「良い子」があぶない―薬物中毒になった若者の生活と意見
人は夢を見る権利を持っています。(中略)けれど、それが確実にできなくなったとき、できないという現実を恨んではいけません。(中略)目覚めなさい、そして夢を見なさい。(P.166)
年末のお掃除で本棚をひっくり返していたら、出てきた本。TV局時代に児童問題をライフワークにしようと思っていて、いろいろ取材に行ったり書籍を買い込んでいたころに買った本だ。読み返すと、自分の今の意思決定の根幹になるような価値判断が随所にある。なるほど、こんなのばかり読んでいたから、迷うことなく子育てSOHOというスタイルを選択できたのだなと。
と同時に、このころすでに今の子供の問題といわれているものの端緒とその原因が明確に現れているのが印象的だ。
たとえば、子ども自身の環境に関して言えば
どんな仕事でもきれいで金儲けができるような錯覚をすぐに持つ(P.59)
人生の価値を、学歴やお金でしか測れない環境の中で育っているから、それがだめになれば次を探すことができない(P.64)
なんかは象徴的に今も現れている。そして親に関していっても、自分たちもそういうプロセスを通ったはずなのに、こうした子供の悩みに対して
その疑問が理解できないだけでなく、理解すると、自分たち、そう日本人たちの生き方を根底から疑ってしまうから(P.76)
という姿勢をとり続け、
会社から提示される幸せだけでなく、個としてこの国でどう生きていくのか(P.116:父が妻や個に示すべき責任)
ということを家族に提示できる父親は少ないという現状は変わらず、そして過去最高収益の裏で
親に、自分の人生を考える場がないんですよ(P.162)
という現実がいまだに進行している。で、その上、大量退職目前の世代を中心に
幸せなことに、『年をとっても衰えない。健康で幸せに生きられる』という幻想を、老人も抱く社会になってしまった(P.164)
ような状況で、15年前の子供たちが薬を打って家庭を崩壊させてまで鳴らしてくれた警鐘を、全く持って無視して、いまだに続けているという次第。
今の日本人、特に大人に必要なこと。「目覚めなさい、そして夢を見なさい」