バガヴァッド・ギーター

あなたは本性から生ずる自己の行為に縛られている(P.139)

インド古典の代表作。その人の本分を守ることを重視するインドの思想を理解するのに一番読みやすいのがこれではないかと。
戦場で突然、同族殺しについて拒絶感が生まれ戦意を喪失した勇者アルジュナと聖者であるクリシュナの対話で進む戯曲である。クリシュナは世界の維持こそが重要であり、その世界のありようの中で、行為の意味と結果の意味の分離を説き、結果をわずらうことを次のように否定する。

あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。行為の結果を動機にしてはいけない。(P.39)

すなわち、武人の本分を果たす結果、同族が撃ち滅んでも、武人である以上はその職務を遂行することこそが重要だと唱える。そして冒頭の引用のように、以下にそのことを拒絶しても、その本性に従って、その行為はなされるという指摘をする。

今の職業選択の自由の中、そこまで本性と一致した職を得ている人は少ないので、そこまで苛烈に自分の職に見合った本分を果たす行為に固執はなかなかできないかもしれない。しかし、ある面において、価値判断を捨て自分の本分に従って全力を尽くすという姿勢も、社会において必要な要素なのかもしれない。