易経
初読のときと最も印象の変わった本のひとつ。占いの本というのでいつも斜に構えて読んでいたんだけど、解説から丁寧に読み倒して、
人生の修養は天地の道に則ってなされるものであり、宇宙精神に合して努力精進をし、その後にすでに成就するところの徳を持ってこれを事業に施して経済を行うのである。よって人類の向上、社会の発展を期することが、造化の化育を賛するゆえんとなるのである。(上p48)
という一説でかなり引っかかった。というのは、宇宙精神云々は抜きとしても、僕自身が常々、事業とはかくあるべしといって歩いている内容とさして違わないのだ。
で、俄然読み直す気になった。読み直してみて、ひとつわかったのは、この本は占いの本ではないということだ。では、何の本かというと「君子のためのハウツー本」なのだ。
この本の中には、陰陽とか卦の話とかもたくさんあるし、これが指し示す世界観も大事なのだけれども、本の大半は、赫々云々な状況は、赫々云々な原因で生まれていて、その原因によって今後赫々云々に推移するから、赫々云々に対応するとよろしい、という内容だったりする。
「赫々云々な原因」に関しては陰陽とか卦とかで行われているんだけど、「赫々云々な状況」を的確に把握さえ出来れば、陰陽や卦はほとんど不要だったりする。
要は、自体を良く観察して「赫々云々な状況」を把握することさえ出来れば、陰陽や卦に頼らなくていいということ。むしろ、その状況が複雑で判別しにくい事態に会って初めて、やむを得ず占うという事態が発生するに過ぎない。孔子などの大思想家が、易をおさむるど占をせず、というのはとても自然なことだった利すると思う。
ちなみに、ハウツー本と読み替えて読むと、この本、とても有益です。なるほど四書五経と数えられ続けたわけです。
予想外に永久書棚保存決定です。