世界の名著〈49〉ベンサム,J.S.ミル
共同の利益のために共同の仕事に従事することがなければ、隣人は味方でも仲間でもなく、したがって敵に他ならない。(P.405、、代議政治論、ミル)
自治とは、政府とはなんぞやということを改めて勉強させられます。ある意味、日本は敵だらけです。
功利主義による政治を称えた大家のベンサムとミルの著作をまとめたのがこれ。今の世界の民主主義政治の機構の組み立ての基本的考え方。しかしながら、
自然は人類を苦痛と快楽という、二人の主権者の支配のもとにおいてきた。(P.81、道徳および立法の諸原理序説、ベンサム)
ということが前提にあるため、何か、「功利=利己」と勘違いされ、どうも弱者切捨ての基礎だとかエゴの闘争の基礎とおもわれがちで、今の日本ではそういう社会機構を作っているように思える。で、政治は信用ならんとかいう人も多い用に思える。が、
各個人が利己主義的な利益を考えるだけで、広範囲な利益に関心を持ったり、みずから進んでその利益に参与しようとしないような状態である場合には、よい統治は不可能なのである。(P.374、代議政治論、ミル)
命令が服従されなければならないのは、統治が何か他の目的を達成するために必要だからである。(P.368、代議政治論、ミル)
というように、功利=利己では決してなく、究極の利というのは利他にあるというのがその根幹で、それを形にすることこそが、政治や政府の役割なのである。そしてもう一つ忘れてはならないことは、
政治機構は自動的なものではないということも銘記しなければならない。それは最初に人間によって、それも普通の人間によって作られたものであるばかりではなく、人間によって運営されているのである。(P.355、代議政治論、ミル)
という事実。人が人を統治するというベースにおいて、統治側と被統治側となったとき両方においてその自覚がないと、様々な悲劇の元になる。だから
社会を構成する個々人の幸福、すなわち彼らの快楽と安全が、立法者が考慮しなければならない目的、それも唯一の目的であること、それこそ各個人が立法者に依存しているかぎり、それに従って自分の行為を形成するようにさせられなければならない唯一の目的である。(P.108、道徳および立法の諸原理序説、ベンサム)
となっているのだ。そのなかにおいて政府の仕事は、刑罰と報償によって、社会の幸福を促進することである。(P.148、、道徳および立法の諸原理序説、ベンサム)そう思うと政治において、最も大事なことは、以下に尽きるんだろうなと。
「だれでも一人として数え、だれも一人以上に数えてはならない」(P.526、功利主義論、ミル)