世界の名著 9 ギリシアの科学

すべての人間は、生まれつき、知ることを求める。(P.123、アリストテレスの自然学)
生命は短く、学術は長い。好機は過ぎ去りやすく、経験は過ち多く、決断は困難である。(P.215、ヒッポクラテスの医学)

人類の知のルーツの一つである西洋の学問の根源をよく実感できる一冊。と言っても、難しい内容ばかりではなく、中学の数学レベルがあれば理解できる内容は後半半分を占める。なので、高校生ぐらいでもいっぺん読む価値はあるのではないだろうか。
それだけではなく、高度な知的概念へのアプローチの源泉も少なくない。

数学的対象は、思考において、自然物の動きから引き離してそれだけ独立に扱いうるもの(P.65、アリストテレスの自然学)

といった、概念と経験や実在への考え方とか、

<偶然>や<ひとりでに>(自然発生)ということも、やはり原因のうちに数えられるべき(P.75、アリストテレスの自然学)

という、確率論へのアプローチの源泉のようなものも見出せるなど、実に興味深かったりもする。
また、こんな古代から、唯脳論的な思想もしっかりと持っていたりする。

われわれの快楽も歓喜も、笑いも戯れも、さらにまた悲嘆も苦悩も、不快も号泣も、脳以外からは生じない(P.205、ヒッポクラテスの医学)

でも、医療と民衆の関係は現代において、ある意味、退化したかも。こんなんじゃ現代人は納得せんでしょ。

死すべき患者と回復しうる患者とを予知して予告するならば、医師は非難されることはないであろう。(P.180、ヒッポクラテスの医学)