HPウェイ - シリコンバレーの夜明け

社会の改善は、少数の人に任せるべき問題ではない。われわれ皆が共有すべき責任なのだ。(p.199)

正直、本書の副題からは想像もつかない内容である。というか、如何に日本で、シリコンバレーでの起業が軽薄な印象を持ってしまっているという感覚を持った。
はじめの数章はHPの創業までの戦前のアメリカの牧歌的な雰囲気のたらたらと述べるだけの内容であり、あまり意味のある内容と思えなかったが、4章以降のHPウェイという本書席のタイトルを解説する章になると、とたんに参考になる書籍に化ける。
なんというか軽薄なコンサル書籍ばかり見ていた今回の通読において優れた価値を見出せた。まるで、優れた日本企業の典型である。時価経営だの、株主価値の増大だの軽薄な経営観とは無縁の優れた経営者向けの本である。
以下、変な解説なぞ抜きにして、つらつらと引用を羅列する。ここから何かを感じ取れるかどうかが経営をする資格の有無なんだろなと思う。当然、自分への警句でもある。

1.利益。利益は、社会への貢献度を知る最高の尺度であり、(略)他の目標に矛盾することなく、最大限の利益を達成するよう努めるべきである。
7.市民性。企業の運営環境を形成している社会の一般市民や組織に貢献することにより、よき市民として責務を果たすこと。
(p.92、1966年設定の目標)

科学、産業、福祉の進歩に技術面から貢献する(p.106、1937年創業時の目標)

HPが特定の分野にかかわるかどうかを決めるかぎは「貢献」である。(p.108)

プロジェクトを選択する目安として六対一の収益性を基準にする(p.110)

「反抗したり騒ぎ立てたりしようと思ったわけではない。本当に、HPを成功させたかっただけだ。」(p.121、会社の決定に反してチャックがプロジェクトを進め成功させて表彰されたときの言)

絶対に競争相手を非難してはならない(略)競争相手を尊重すべき(p.125)

自分が部門や組織のために最適と考えた方法で進む自由が与えられていなければならない。(p.143)

会社が従業員を信じないと問題が起きる(p.150)

これからの組織では、(階級と権力ではなく)相互理解と責任感が必要である(p.167)

個人的なことでも、仕事に関することでも、悩みを持っている従業員に対し適切な管理者に相談することを勧める(p.170、オープン・ドア・ポリシー)

成功する企業は、管理職は内部から昇格させるのが常道だと考えている。(p.175)

私は驚き、失望した。彼らは、企業の責任は株主のために利益を上げることだけだと考えていたのである(p.178、1940年代末期に業界の会議に出席し、企業の責任は社会全体に及ぶことを主張したとき)

われわれには投票する責任があると信じている。(p.185)

うっぱらうつもりだったけど、書棚に残すこと決定。